#26 デジタル政策2025—2つの注目点
谷脇康彦(デジタル政策フォーラム代表幹事)
2025年1月6日
2025年を迎えた。今年の前半戦、デジタル政策を巡って注意しておきたい国際的なトピックスを2つ挙げたい。
その一つが本年7月にジュネーブで開催されるWSIS+20。世界情報社会サミットWSIS(World Summit on Information Society)は、今から20年ほど前、インターネットが急速に普及し始めて情報通信技術の重要度が各国で急速に増していた中、情報・知識・情報通信技術へのアクセスを国際的に推進することを目的として国連が開催。2005年11月のチュニス宣言に基づきIGF(Internet Governance Forum)が開催されてきた。IGFはインターネットに関わる広範なテーマについて産学官民の枠を超えてマルチステークホルダー方式で議論する年1回の議論の場として重要な役割を果たしており、昨年12月のリヤド会合で19回目となる。
IGFは誰もが参加して発言できるユニークな会合。オンライン上で常日頃行われているインターネットのあり方を巡る大小様々な議論を年に1回集約して開催される、国連主催の巨大なオフ会といえば良いだろうか。IGFは当初5年間を設置期限としていたが、数次にわたる延長を経て、2015年に10年間の延長開催が決まり、今日に至っている。WSIS+20は、IGFの設置から20年を経過し設置期限を迎える中、今後のインターネットの規律を含むデジタルガバナンスについて議論するIGFという場を今後どうしていくのかを決める重要な機会となる。
もう一つが国民経済計算(SNA : System of National Accounts)の国際基準の改定。国民経済計算は国のGDPなど基幹統計を構成するものだが、2008年に大幅改定されて以来、本年3月久しぶりに国連統計委員会で新基準(2025SNA)が採択予定となっている。今回の大幅改定のポイントの一つがデジタル化の進展を各種経済活動にどう反映させるかという点。具体的には、「データの資本化」に取り組む予定。これは、データが重要な生産要素であり、かつ繰り返し生産活動に利用され得ることから、SNAにおいてデータを固定資本として位置付ける方向で検討が進んでいる。
これが実現すると、企業の資産としてデータという無形資産を計上することが可能となり、企業戦略におけるデータ資産の重要性が可視化されるとともに、マクロ経済的にみてもデータ資産がどの程度経済的インパクトを持つのかを明らかにすることができ、データ駆動社会実現に向けた大きな一歩となる。先行的な取り組みは中国にある。企業が合法的に保有・支配し、企業に経済的利益をもたらすことが予想されるデータは無形資産としてバランスシートに計上可能であり、例えばチャイナユニコムが403万元(約43億円)を計上するなど対応が進んでいる(日経上海支局/土井倫之「中国が急ぐデータ会計」(日経電子版24/12/16)。同様の取り組みは今回のSNA改定を契機として、中国以外でも各国で進むと考えられ、こうした動きにも大いに注目していきたい。
今年もDPFJの活動にご期待ください。